「育休、取ろうと思う」
パートナーからそう言われたとき、うれしさと一緒に、少しだけ引っかかった人もいるのではないでしょうか。「取ってくれるのはありがたい。でも、家にいてくれたら本当に楽になるのかな」と。
反対に、取る側からすると「せっかく休むのだから、ちゃんと戦力になりたい」と思いつつ、具体的に何をすればいいのかは、正直よくわからない。そんな状態で初日を迎えることも多いはずです。
この記事は、育休を「取るかどうか」の話ではありません。取ると決めたあと、始まる前に、ふたりで何を決めておくといいかの話です。

「取るか」はもう半分決着している。問題は「取って何をするか」
男性の育児休業を取り巻く空気は、この数年で大きく変わりました。育休を取る男性の割合は、令和元年度には7.48%でした。それが毎年のように上がり、令和7年度には50.9%と、はじめて半分を超えました(厚生労働省の調査)。

これは、妻が出産した男性のうち、育休を始めた(または申し出た)人の割合です。令和5年度からは、産後パパ育休も含めて数えています。
制度も後押ししています。男性が使える育休は、大きく2つです。
| 制度 | 取れる時期と長さ | 分割 | 申し出 |
|---|---|---|---|
| 産後パパ育休 | 生まれてから8週間以内に、通算4週間(28日)まで | 2回まで | 原則、休業の2週間前まで |
| 育児休業 | 原則、子が1歳になるまで(保育所に入れないなどの場合は最長2歳まで) | 2回まで | 勤務先の手続きに従う |
2つは別の制度なので、組み合わせて取れます(厚生労働省)。また会社は、妊娠・出産を申し出た人に、制度を個別に知らせて、育休を取るかどうかの意向を確認することが義務になっています。
つまり、「取れるかどうか」「取っていいのかどうか」というハードルは、以前よりはっきり下がっています。
そうなると、次に効いてくるのは中身です。休みを取ったこと自体は、残念ながらゴールではありません。在宅している時間が増えても、赤ちゃんのことを把握しているのが片方だけなら、もう片方は指示を出し続ける立場から抜け出せないからです。ここを準備しないまま突入すると、「家にいるのに、なぜか楽になった気がしない」という、いちばんもったいない結果になりがちです。
なぜ「家にいるのに戦力にならない」が起きるのか
よく「とるだけ育休」という言い方をされますが、私はこれを、本人のやる気の問題だとは思っていません。多くの場合、やることが決まっていないのと、必要な情報が片方に偏っているの、この2つが原因です。
考えてみると当然で、出産のその日まで、赤ちゃんの世話のほとんどは母体側の準備に紐づいて進みます。授乳のリズム、機嫌のいい時間帯、ミルクを足す目安、うんちが出たかどうか——こうした判断に必要な情報が、自然と片方の頭の中にたまっていく。育休で急に家にいる時間ができても、この蓄積は引き継がれません。
だから、取る側は「何をすればいい?」と聞くしかなく、頼む側は毎回説明する。説明して指示を出すこと自体が労働なので、これでは負担がうまく分かれません。作業だけを渡しても、判断は渡せない——この構造は、里帰りのように物理的に離れている期間ほど強く出ます。似たテーマを里帰り出産で夫が「育児未経験」のまま。分断された記録を共有でつなぐでも書きました。
産後パパ育休も育児休業も分割して取れるので、「出産直後にまとめて」だけが取り方ではありません。「里帰りから戻るタイミングに合わせて」「妻の職場復帰前後に」など、わが家のいちばん大変な時期に合わせて配置することもできます。取り方の条件や給付は、勤め先や状況によって変わります。早めに勤め先の担当の窓口に聞いておくと安心です。
始まる前に、ふたりで決めておきたいこと
「なんとなく一緒にやろう」で始めると、結局は気づいた人がやる=いつもの人がやる、に戻ります。おすすめは、育休が始まる前に、次のことを一度だけ、口に出して決めておくことです。完璧な分担表を作る必要はありません。方針が共有できていれば十分です。
| 決めておくこと | 具体的に話すこと |
|---|---|
| いつ取るか | 出産直後か、里帰り明けか、復帰前か。わが家が大変な時期はいつか |
| 「担当」を持つ | 「手伝う」ではなく、沐浴・寝かしつけ・買い出しなど丸ごと引き受ける係を決める |
| 夜をどう分けるか | 夜間の対応を交代制にするか、時間帯で割るか。ふたりとも倒れない形にする |
| 情報をどう共有するか | 授乳・うんち・睡眠を、その都度どこに記録して、どう見るか |
| がんばりすぎない線 | 家事の完成度を下げる、頼れる制度やサービスは使う、と先に合意しておく |
この中でつまずきやすいのが、いちばん下の2つです。「担当を決める」まではできても、判断に必要な情報を相手も見られる状態にしておかないと、担当を持った側もいちいち確認する羽目になります。「今日のミルク、前は何時だっけ」を毎回聞くようでは、担当を持った意味が薄れてしまいます。
だから、取る前に決めるべきいちばん実務的なことは、「記録をどこで共有するか」だと思うのです。ここが決まっていると、育休初日から、聞かなくても動けるようになります。
ママレコでできること
赤ちゃんの授乳・おしっこ・うんち・睡眠・離乳食は、ママレコに記録するとそのまま時系列で並びます。そして、この育児記録と成長記録は、パートナーと共有できます。共有すると、どちらのスマホからでも同じ記録が見られて、どちらからでも追加・編集ができます。
これが育休中に効いてくるのは、「指示を出す/受ける」の関係を崩せるからです。担当を持った側は、家を出る前や仕事の合間にアプリを開けば、直近の授乳が何時だったか、今日よく眠れているかがわかる。聞かなくても、自分で判断して動ける。頼む側は、そのたびに説明しなくてよくなります。

しかも、このパートナー共有は無料です。ここを有料にしてしまうと、「ふたりで育てる」という前提そのものが崩れてしまうので、基本機能として開放しています。招待は相手のメールアドレスを入れるだけで、相手が承認したその時点から共有が始まります。
情報の偏りを記録でなくす考え方は、「言わなくても分かって」は無理。育児の情報格差を、記録でなくすでも詳しく書いています。育休が明けたあとも、この「同じ記録を見ている」状態をそのまま続けられるのも、共有のいいところです。むしろ、日中の様子が見えなくなる復帰後にこそ効いてくるとも言えます。
ママレコでパートナーと共有されるのは、育児記録と成長記録(お子さまの情報)です。生理・基礎体温・妊娠の記録や、アイコン付きのプライベート予定は共有されません。個人の予定や体のことまで筒抜けになるわけではありません。
お金の不安は、先に調べておくと軽くなる
「収入が減るのが心配で踏み切れない」という声もよく聞きます。育休中は、雇用保険から給付金が出ます。休みはじめてから180日までは、休む前の賃金の67%、そのあとは50%です(厚生労働省)。
給付金には税金がかかりません。育休中は、申し出れば健康保険と厚生年金の保険料も免除されます。そのため、手取りで見ると、額面の割合ほどは減りません。
さらに2025年4月からは「出生後休業支援給付金」が始まりました。パパが生まれてから8週間のうちに、あわせて14日以上の育休を取るなどの条件を満たすと、最大28日ぶん、13%が上乗せされます。67%と合わせて80%で、手取りでは10割相当です。
この上乗せは本来「夫婦ともに育休を取る」ことが条件です。ただ、ママが産後休業中なら、ママの育休は条件になりません。細かい条件は、厚生労働省の簡易診断ツールで確かめられます。取ると決めたら、勤務先の窓口にも早めに確認しておくと、お金の不安のぶんだけ、当日の動きに集中できます。
「取ってくれた」で終わらせない
育休を取ると決めてくれたこと、それ自体はとても大きな一歩だと思います。ただ、その一歩を本当に効かせるかどうかは、始まる前のたった一度の話し合いにかかっているのではないでしょうか。
何を担当するか、そして、判断のもとになる記録をどこで共有するか。この2つを先に決めておくだけで、育休は「一緒にいた期間」から「一緒に育てた期間」に変わります。取る前の今夜、ぜひ一度、話してみてください。
参照
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」結果の概要
- 厚生労働省「産後パパ育休(出生時育児休業)」
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」
- 厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」
- 厚生労働省「出生後休業支援給付の簡易診断(要件確認)ツール」
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