「育休、取ろうと思う」
パートナーからそう言われたとき、うれしさと一緒に、少しだけ引っかかった人もいるのではないでしょうか。「取ってくれるのはありがたい。でも、家にいてくれたら本当に楽になるのかな」と。
反対に、取る側からすると「せっかく休むのだから、ちゃんと戦力になりたい」と思いつつ、具体的に何をすればいいのかは、正直よくわからない。そんな状態で初日を迎えることも多いはずです。
この記事は、育休を「取るかどうか」の話ではありません。取ると決めたあと、始まる前に、ふたりで何を決めておくといいかの話です。

「取るか」はもう半分決着している。問題は「取って何をするか」
男性の育児休業を取り巻く空気は、この数年で大きく変わりました。厚生労働省の調査では、男性の育休取得率は令和5年度(2023年度)に3割を超えました(令和5年度雇用均等基本調査)。制度も後押ししていて、2022年10月からは「産後パパ育休(出生時育児休業)」が始まり、子どもが生まれてから8週間以内に、通常の育休とは別に最大4週間を、2回まで分けて取れるようになりました(厚生労働省「育児・介護休業法について」)。
つまり、「取れるかどうか」「取っていいのかどうか」というハードルは、以前よりはっきり下がっています。
そうなると、次に効いてくるのは中身です。休みを取ったこと自体は、残念ながらゴールではありません。在宅している時間が増えても、赤ちゃんのことを把握しているのが片方だけなら、もう片方は指示を出し続ける立場から抜け出せないからです。ここを準備しないまま突入すると、「家にいるのに、なぜか楽になった気がしない」という、いちばんもったいない結果になりがちです。
なぜ「家にいるのに戦力にならない」が起きるのか
よく「とるだけ育休」という言い方をされますが、私はこれを、本人のやる気の問題だとは思っていません。多くの場合、やることが決まっていないのと、必要な情報が片方に偏っているの、この2つが原因です。
考えてみると当然で、出産のその日まで、赤ちゃんの世話のほとんどは母体側の準備に紐づいて進みます。授乳のリズム、機嫌のいい時間帯、ミルクを足す目安、うんちが出たかどうか——こうした判断に必要な情報が、自然と片方の頭の中にたまっていく。育休で急に家にいる時間ができても、この蓄積は引き継がれません。
だから、取る側は「何をすればいい?」と聞くしかなく、頼む側は毎回説明する。説明して指示を出すこと自体が労働なので、これでは負担がうまく分かれません。作業だけを渡しても、判断は渡せない——この構造は、里帰りのように物理的に離れている期間ほど強く出ます。似たテーマを里帰り出産で夫が「育児未経験」のまま。分断された記録を共有でつなぐでも書きました。
産後パパ育休は分割して取れるので、「出産直後にまとめて」だけでなく、「里帰りから戻るタイミングに合わせて」「妻の職場復帰前後に」など、わが家のいちばん大変な時期に合わせて配置することもできます。取り方の要件や給付は勤務先や状況で変わるため、早めに勤務先の担当窓口に確認しておくと安心です。
始まる前に、ふたりで決めておきたいこと
「なんとなく一緒にやろう」で始めると、結局は気づいた人がやる=いつもの人がやる、に戻ります。おすすめは、育休が始まる前に、次のことを一度だけ、口に出して決めておくことです。完璧な分担表を作る必要はありません。方針が共有できていれば十分です。
| 決めておくこと | 具体的に話すこと |
|---|---|
| いつ取るか | 出産直後か、里帰り明けか、復帰前か。わが家が大変な時期はいつか |
| 「担当」を持つ | 「手伝う」ではなく、沐浴・寝かしつけ・買い出しなど丸ごと引き受ける係を決める |
| 夜をどう分けるか | 夜間の対応を交代制にするか、時間帯で割るか。ふたりとも倒れない形にする |
| 情報をどう共有するか | 授乳・うんち・睡眠を、その都度どこに記録して、どう見るか |
| がんばりすぎない線 | 家事の完成度を下げる、頼れる制度やサービスは使う、と先に合意しておく |
この中でつまずきやすいのが、いちばん下の2つです。「担当を決める」まではできても、判断に必要な情報を相手も見られる状態にしておかないと、担当を持った側もいちいち確認する羽目になります。「今日のミルク、前は何時だっけ」を毎回聞くようでは、担当を持った意味が薄れてしまいます。
だから、取る前に決めるべきいちばん実務的なことは、「記録をどこで共有するか」だと思っています。ここが決まっていると、育休初日から、聞かなくても動けるようになります。
ママレコでできること
赤ちゃんの授乳・おしっこ・うんち・睡眠・離乳食は、ママレコに記録するとそのまま時系列で並びます。そして、この育児記録と成長記録は、パートナーと共有できます。共有すると、どちらのスマホからでも同じ記録が見られて、どちらからでも追加・編集ができます。
これが育休中に効いてくるのは、「指示を出す/受ける」の関係を崩せるからです。担当を持った側は、家を出る前や仕事の合間にアプリを開けば、直近の授乳が何時だったか、今日よく眠れているかがわかる。聞かなくても、自分で判断して動ける。頼む側は、そのたびに説明しなくてよくなります。

しかも、このパートナー共有は無料です。ここを有料にしてしまうと、「ふたりで育てる」という前提そのものが崩れてしまうので、基本機能として開放しています。招待は相手のメールアドレスを入れるだけで、相手が承認したその時点から共有が始まります。
情報の偏りを記録でなくす考え方は、「言わなくても分かって」は無理。育児の情報格差を、記録でなくすでも詳しく書いています。育休が明けたあとも、この「同じ記録を見ている」状態は続けられます。むしろ、日中の様子が見えなくなる復帰後にこそ効いてくるとも言えます。
ママレコでパートナーと共有されるのは、育児記録と成長記録(お子さまの情報)です。生理・基礎体温・妊娠の記録や、アイコン付きのプライベート予定は共有されません。個人の予定や体のことまで筒抜けになるわけではありません。
お金の不安は、先に調べておくと軽くなる
「収入が減るのが心配で踏み切れない」という声もよく聞きます。育児休業給付金は、休業開始から180日までは休業前賃金のおおむね67%が支給されます(厚生労働省「育児休業給付について」)。給付は非課税で、育休中は社会保険料も免除されるため、手取りベースで見ると額面の割合より目減りは小さくなります。
さらに2025年4月からは、両親がともに一定期間育休を取るなどの要件を満たすと給付を上乗せする「出生後休業支援給付金」も始まっています。仕組みは条件によって変わるので、取ると決めたら、勤務先とお住まいの制度を早めに確認しておくと、お金の不安のぶんだけ、当日の動きに集中できます。
「取ってくれた」で終わらせない
育休を取ると決めてくれたこと、それ自体はとても大きな一歩だと思います。ただ、その一歩を本当に効かせるかどうかは、始まる前のたった一度の話し合いにかかっているのではないでしょうか。
何を担当するか、そして、判断のもとになる記録をどこで共有するか。この2つを先に決めておくだけで、育休は「一緒にいた期間」から「一緒に育てた期間」に変わります。取る前の今夜、ぜひ一度、話してみてください。
参照
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