パートナーが毎朝、枕元で基礎体温を測っている。カレンダーに印をつけ、周期を気にして、通院の予定を調整している。その横で自分は、妊活のために何をすればいいのか、正直よく分かっていない。
手伝いたい気持ちはあるけれど、体温を測るわけでもないし、結局「見守る」くらいしかできることがない気がする。そんなふうに、どこか他人事のような距離を感じている男性は、案外多いのではないでしょうか。
けれど妊活は、片方の体だけの話ではありません。この記事で考えたいのは、パートナーの妊活を「支える」ことより、自分の体も同じくらい関わっている当事者として、今日から何ができるかです。生活習慣と検査の目安に落として整理します。

男性の妊活は「生活習慣を整える」と「必要なら調べる」
先に結論から言えば、男性が妊活でできることは大きく二つです。ひとつは睡眠・喫煙・飲酒・体重といった生活習慣を見直すこと。もうひとつは、妊娠を望んで一定の期間が過ぎても授からないとき、女性の検査と並行して自分も検査を受けることです。
この二つを最初に押さえておきたいのは、不妊の要因が女性側だけにあるとは限らないからです。WHO(世界保健機関)の調査では、男性だけに原因がある割合が24%、男女ともに原因がある割合が24%でした。合わせると、約半数に男性側の要因が関わっていることになります(こども家庭庁「男性不妊について」)。
つまり「妊活=女性がやること」という前提そのものが、事実とずれているわけです。
男性不妊の原因は、どんなものが多いのか
国内の医療機関で、男性不妊の患者さんおよそ7,300人を調べた結果があります(厚生労働省の研究班、2015年度)。原因の内訳は、次のとおりでした。

いちばん多いのは、精子をつくる働きそのものに問題がある「造精機能障害」です。次が、勃起や射精がうまくいかない「性機能障害」。精子の通り道がふさがっている「精路通過障害」は少数でした。
どれも、見た目や日々の体調だけでは気づけません。だからこそ、必要なときに検査を受けることに意味があります。
なぜ、男性側は後回しになりやすいのか
ここで少し立ち止まって考えたいのは、要因が双方にありうると分かっていても、なぜ実際には男性側の取り組みが後回しになりやすいのか、ということです。
理由のひとつは、男性側には「毎日の可視化」がないことだと思います。女性には基礎体温を測る、周期を記録する、排卵日を意識するといった、体の状態と向き合う日々の手がかりがあります。うまくいかない月があれば、その事実も数字として突きつけられる。
いっぽう男性側には、そうした日常的なきっかけがほとんどありません。体の状態が目に見えないから、当事者としての実感が芽生えにくく、「何かあれば言ってもらえばいい」という受け身の位置に、無意識にとどまってしまう。
もうひとつは、男性不妊が語られる機会そのものが少ないことです。妊活の情報は女性向けに書かれたものが多く、男性が自分の生活習慣や検査について調べようとしても、入り口が見つけにくい。
結果として「まず妻が病院に行って、そこで何か言われたら考える」という順番になりがちです。けれど本来は、女性の検査と男性の検査は並行して進められるもので、どちらかが先ということはありません。
妊娠を望んで避妊をせずに一定の期間が過ぎても授からないときは、ふたりで一度、産婦人科や泌尿器科、不妊の専門外来に相談することが検討されます。この「一定の期間」の考え方は、年齢によって変わるものです。男性の基本的な検査は精液検査で、女性側の検査と並行して進めることがすすめられています。精液検査の結果は日によるばらつきが大きいため、数値に一喜一憂せず、複数回受けてみることも大切です(こども家庭庁)。ここに書いたのは一般的な情報であり、受診の要否や時期は年齢・状況によって異なります。気になるときは自己判断せず、医療機関にご相談ください。
今日から整えられること
では、生活習慣として具体的に何ができるか。以下は「これをすれば授かる」という話ではありません。生活習慣が体の状態にどう関わるかは、一つひとつ言い切れるものではありません。ここでは、精子の状態に関わりうる要因として、学会や公的機関の資料でくり返し挙げられているものを整理しました。どれも、健康のために誰にとっても悪くないことばかりです。
| 見直したいこと | 具体的な行動の例 |
|---|---|
| 食事 | 栄養バランスのよい食事を心がける。外食や夜食に偏る日を減らす |
| 運動 | 適度な運動を続ける。まずは歩く時間を増やすところから |
| 睡眠 | 十分に眠る。夜ふかしを減らし、寝る時間をなるべく一定に |
| 喫煙 | 喫煙は精子の数や運動率の低下に関わると報告されている。妊活を機に禁煙を検討する |
| 飲酒 | 量が多い日を減らす。休肝日を作る |
| 体重 | 極端な肥満は精子の状態に関わるとされる。急な減量ではなく食事と運動で少しずつ |
| 精巣を温めすぎない | サウナや長時間の入浴、ひざの上でのパソコン作業など、精巣を高温に長く置く習慣を見直す |
| ストレス | 抱え込みすぎない。運動や睡眠と合わせて、無理のない範囲で |
とくに現実的な入り口としておすすめしたいのは、上の表を相手にだけ求めないことです。妊活のための節制を女性側にだけお願いすると、それは「あなたの体の問題」というメッセージになってしまいます。
そうではなく、睡眠を整える、お酒を控える、禁煙に取り組むといったことを、自分ごととして並走する。私自身も、こういうことは「一緒にやろう」と言われるほうが続くだろうと思います。片方だけが我慢している状態をなくすことが、妊活を長い目で続けるうえでは、案外いちばん効くのではないでしょうか。
なお、排卵日をピンポイントで狙って身構える関わり方は、義務感を生みやすく、ふたりの空気をぎくしゃくさせがちです。妊娠しやすいとされる期間は排卵日の一日だけではないという点は、排卵日はいつ?記録から予測する考え方にまとめました。生活を整えることと、日々のリズムを大事にすること。この二つは、実はつながっています。
記録を、自分ごとにする道具として使う
ここまで書いてきたことは、要するに「妊活を、女性ひとりの体の話にしない」に尽きます。妊活の記録アプリを、その視点で使うこともできます。
ママレコでは、アプリを使いはじめるときに役割を「ママ」か「パパ」で選べます。パパとして登録して使いはじめると、パートナーの妊活の記録を横目に見ながら、自分も睡眠や生活を整える意識を持ちやすくなる。妊活の段階から「ふたりで記録に関わる」姿勢に慣れておくことは、そのまま、赤ちゃんが生まれてからの育児記録・成長記録の共有につながっていきます。
育児記録の共有そのものは無料で、パートナーと共有していれば、どちらか1人がプレミアムに登録すればふたりとも使えます。産後を見据えた準備はパパ育休を妊娠中から準備する話もあわせてどうぞ。
いっぽうで、大事な線引きがあります。妊活中の体のデータ(生理・基礎体温・妊娠の記録)は、パートナーには共有されません。 これはママレコの設計で、記録はあくまで本人のもの。「本人が見せたいときに見せる」使い方になります。
だからこそ、生活習慣を聞き出したり数字を評価したりする前に、支える側としての言葉の距離感も大切になります。声かけの具体は妊活を支える側の声かけ|プレッシャーにしない関わり方にまとめたので、あわせて読んでもらえればと思います。

ママレコが表示する周期や排卵の予測は、記録にもとづく目安であり、医療的な診断ではありません。妊娠や不妊のことで不安があるときは、自分だけで判断せず、産婦人科や泌尿器科などに相談してください。
「見守る」から「一緒に整える」へ
妊活の話になると、男性はつい「自分にできることは少ない」「見守るくらいしかない」と引いてしまいがちです。けれど、要因が双方にありうる以上、生活習慣を整えることも、必要なときに検査を受けることも、まぎれもなく自分にできることです。
毎朝の基礎体温のような分かりやすい儀式がないぶん、男性側の妊活は意識しないと後回しになります。だからこそ、早く寝る日を作る、お酒を減らす、禁煙を考える——そんな小さなことからでいい。片方に寄っていた重さが、少しずつふたりに分かれていく。妊活は、支える・支えられるの関係ではなく、ふたりで並んで進む時間なのだと思います。
参照
- こども家庭庁「みんなで知ろう、不妊症不育症のこと(男性不妊について)」
- 日本泌尿器科学会編・日本生殖医学会後援「男性不妊症診療ガイドライン 2024年版」
- 日本生殖医学会「生殖医療Q&A:不妊症の検査はどこで、どんなことをするのですか?」
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