問診票を渡されて、いざ記入しようとしたとき。「授乳は1日何回ですか」「よく笑いますか」「気になることはありますか」。ペンを持ったまま、「えっと、最近どうだったっけ」と手が止まった経験はないでしょうか。
つい先週のことなのに、いざ聞かれると、はっきり思い出せない。まして待合室で子どもがぐずり始めると、頭のなかは真っ白になります。乳幼児健診で聞かれることの多くは、実は「特別なこと」ではありません。ただ、それが当日いちばん答えにくいのです。
この記事では、健診の問診で何を聞かれるのか、各回で診るところがどう変わるのか、そして当日あわてないための準備のしかたを整理します。

乳幼児健診で聞かれるのは、ふだんの様子
先に答えを言うと、問診で聞かれることの中心は、日々の生活の様子です。授乳やミルクの回数、寝る時間・起きる時間、うんちの回数や色、離乳食の進み具合、どんな遊びをするか、そして「気になっていること」。医師や保健師は、こうしたふだんの積み重ねから、その子の育ちと、家庭の困りごとを見ています。
こども家庭庁の資料でも、乳幼児健診は病気のふるい分けだけの場ではないとされています。生活習慣・社会性の発達・栄養・事故予防といった、子育てそのものを確認する時間だという位置づけです。つまり問診は「テスト」ではなく、家での様子を医師と共有して、必要なら一緒に手を打つためのものです。
だからこそ、答えは家のなかにあります。その一週間を思い出せるかどうかが、健診をうまく使えるかの分かれ目になります。
いつ・何を診るのか、回ごとに変わる
健診は月齢によって、見るところが少しずつ移っていきます。全体像がわかると、問診の質問の意図もつかみやすくなります。
| 時期の目安 | 主に診るところ |
|---|---|
| 1か月 | 体重の増え方、授乳、黄疸など、生まれてからの体の様子 |
| 3〜4か月 | 首のすわり、あやすと笑うか、目で追うかなど、体の発育が中心 |
| 6〜7か月・9〜10か月ごろ | 寝返り・おすわり・つかまり立ち、人見知り、離乳食の進み(自治体により実施回が異なる) |
| 1歳6か月 | ひとり歩き、意味のある言葉、積み木、指さし、歯——体と心の両方 |
| 3歳児 | 目の見え方・耳の聞こえの検査、尿検査、言葉、歯。就学に向けた確認 |
回ごとにこれだけ違うのは、その月齢でいちばん確かめたい育ちが移り変わるからです。3〜4か月ごろは体の発育が主役ですが、1歳半になると、歩く・話すといった心の発達もあわせて見ていきます。だから「前は聞かれなかったのに」という項目が増えても、順調に育っているからこその質問だと受け取って大丈夫です。
乳幼児健診のうち、1歳6か月児健診と3歳児健診は母子保健法で市町村に実施が義務づけられており、公費(無料)で受けられます(母子保健法第12条)。それ以外の3〜4か月児健診などは、市町村が必要に応じて実施するもの(同第13条)で、回数や時期は地域で差があります。さらに、これまで公的な支援がなかった1か月児・5歳児健診についても、2024年度から国の補助による公費支援が全国で広がっています。実際の日程・回数・費用は、お住まいの自治体からの案内を基準にしてください。
なぜ当日は答えづらいのか
問診の質問がやさしいのに答えに詰まるのは、記憶のせいではありません。育児は、覚えておくには量が多すぎるからです。
授乳は1日に何回もあり、夜中の記憶はとくにあいまいです。うんちの色は、そのときは気にしても、数日たてば忘れます。「最近よく笑う」も、いつから増えたかと聞かれると言葉に詰まります。これは注意不足ではなく、その場の記憶で一週間を再現しようとするから起きることです。
上位の解説記事の多くは「健診では何を診るか」を丁寧に説明してくれます。ただ、当事者がいちばん困る「それを当日どう答えるか」までは踏み込んでいないことが多いように思います。ここは医療ではなく、記録と段取りの領域。家で今日から手を打てるところです。
私自身も、その日の記憶だけで問診票を埋めようとすると必ずあやふやになるので、手元に控えを開いておくようにしています。数字が一つ言えるだけで、医師との会話がぐっと具体的になります。
当日までにしておくと安心なこと
やることは多くありません。前日か当日の朝に、次のあたりを見返しておくだけで、問診票の空欄が埋まりやすくなります。
| 準備 | 中身 |
|---|---|
| 母子健康手帳 | 出生時からの記録と、当日の記入欄。忘れず持参する |
| 問診票 | 事前に届く自治体が多い。空欄は前日までに埋めておく |
| ふだんの様子の控え | 授乳・睡眠・排便・離乳食のここ数日の回数や様子 |
| 聞きたいことのメモ | 気になる点を1〜3個。当日は緊張して忘れやすい |
| 着替え・おむつ | 身体測定で脱ぐことが多い。替えを一式 |
とくに効くのが、右の2つです。問診でよく聞かれることと、記録があると答えやすいことは、だいたい対応しています。
| 問診で聞かれること | 記録があると、こう答えられる |
|---|---|
| 授乳・ミルクの回数 | 「1日8回、うちミルクが2回くらい」 |
| よく眠れているか | 「夜は3時間おき、昼寝は午前と午後に1回ずつ」 |
| うんちの回数・様子 | 「1日1〜2回、色は黄色。先週ゆるい日が1日」 |
| 離乳食の進み | 「2週間前から1日1回、10倍がゆから」 |
| 気になること | メモを見ながら「寝つきが悪い日が続いていて…」 |
うんちの色で迷ったときは、赤ちゃんのうんちの色の記事もあわせて見ておくと、当日「何色でしたか」に落ち着いて答えられます。
ひっかかった、と言われたら
「他の人はこちらも質問」でも「3歳児健診でひっかかる割合は?」がよく検索されています。ここは、いちばん誤解されやすいところなので、先に触れておきます。
乳幼児健診は、気になる育ちを早めに見つけて、必要な子を次の相談や検査につなぐためのスクリーニング(ふるい分け)です。「様子をみましょう」「一度くわしく診てもらいましょう」と言われても、それは異常が確定したという意味ではありません。経過をみる・再検査になることは珍しくなく、その多くはその後問題なく育っていきます。心配な言葉をかけられたときこそ、家での様子を具体的に伝えられると、医師も判断しやすくなります。気になることは自己判断せず、健診の場や、かかりつけの小児科でご相談ください。
大切なのは、その場の一言に一喜一憂することより、ふだんの様子を正しく伝えられることだと思います。そのための材料は、やはり日々の記録です。
ママレコでできること
ここまでは、アプリがなくてもできる話です。ノートや母子手帳のメモ欄でも十分に足ります。ただ、「その一週間を思い出す係」を頭の外に置いておきたいときに、記録アプリが少し楽をさせてくれます。
ママレコでは、授乳・おしっこ・うんち・睡眠・離乳食・体温を、その場でさっと記録できます。健診の前日に開けば、ここ数日の回数や様子がそのまま並んでいるので、問診票の「1日何回」に、記憶ではなく事実で答えられる。身長・体重は成長曲線の記事で触れた母子手帳スタイルのグラフで、増え方の流れも見返せます。

これらの育児記録と成長記録は、パートナーと無料で共有できます。健診に連れて行く人と、家で見ていた人が違っても、同じ記録を見てから送り出せるので、「最近どうだった?」の確認から始めずにすみます。当日聞きたいことは、本人用のメモ機能に書いておくと、待合室で見返せます(メモは本人だけのもので、共有はされません)。
予防接種は健診と近い時期に案内されることが多いので、予防接種スケジュールの記事のように、次の予定をカレンダーに入れておくと、健診と一緒に取りこぼしにくくなります。子どもが2人以上のときは、子どもごとに記録を分けられます(子どもの登録は無料で2人まで、プレミアムで無制限)。
ママレコが表示する予測・判定は、記録にもとづく目安であり、医療的な診断ではありません。健診の内容・時期・判定については、必ず母子健康手帳・自治体の案内・かかりつけ医で確認してください。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関にご相談ください。
問診票の空欄は、思い出す欄ではなく、見返す欄
健診の問診は、記憶力を試す時間ではありません。家での様子を医師と分け合うための時間です。だから、当日その場で全部を思い出そうとしなくて大丈夫です。
前の晩に、ここ数日の授乳と睡眠とうんちを、さっと見返しておく。聞きたいことをひとつ書き留めておく。それだけで、「うまく答えられなかったらどうしよう」という当日のそわそわは、ずいぶん静かになります。まずは次の健診の一週間前から、いつもの記録に一言ずつ添えるところから始めてみてください。
参照
- こども家庭庁「乳幼児健診に関する取組み」
- こども家庭庁「『1か月児』及び『5歳児』健康診査支援事業」(資料)
- e-Gov法令検索「母子保健法」(第12条・第13条)
- 国立成育医療研究センター「乳幼児健康診査 身体診察マニュアル」
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