夜、布団に入ってから、スマホで「胎動 10カウント 平均」と検索したことはないでしょうか。出てきた記事には「20分くらいが平均」とある。でも今日は、10回動いてくれるまでに40分かかった気がする。数えているうちにこちらが眠くなって、途中で分からなくなった――そんな夜に、かえって不安だけが残る。
胎動カウントは、まじめな人ほど「宿題」にしてしまいます。この記事では、そもそもカウントは何を測っているのか、平均の数字と自分を比べる意味はあるのか、そして本当に気をつけるべきサインはどこなのかを、公的なガイドラインをもとに整理します。

胎動カウントは「合格ライン」を測る検査ではない
先に、いちばん大事なところを書きます。胎動カウントは、点数をつけて合否を判定するための検査ではありません。
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の「産婦人科診療ガイドライン―産科編」には、胎動の数え方として、一定時間に感じた回数を記録する方法と、10回感じるまでにかかった時間を測る方法(いわゆる10カウント法)があると書かれています。ただし、そのどちらについても、「これを下回ったら異常」と言える、広く合意された基準はないとされています。カウントを習慣にすれば赤ちゃんを亡くすことが確実に減る、というほど明確な科学的根拠も、まだ示されていません。
だから、「平均は20分なのに自分は40分かかった」と落ち込む必要は、本来ありません。赤ちゃんには一人ひとり、動きやすい時間帯や動き方のクセがあります。よく動く子もいれば、もともとゆったりした子もいる。大切なのは、他の妊婦さんの平均と自分を比べることではなく、昨日までの「その子のいつも」と、今日を比べることです。
胎動はいつから、どう変わっていくのか
赤ちゃん自身は妊娠の早い時期からお腹の中で動いていますが、それを「胎動」としてはっきり感じ取れるようになるのは、もう少し先です。一般的には、はじめての妊娠で20週前後、二度目以降で16〜18週ごろに気づく人が多いとされますが、これも個人差がとても大きい目安にすぎません。最初は「腸が動いた?」と迷うような、ごく小さな感覚のことが多いのではないでしょうか。
そして、妊娠後期に入ると、多くの人が胎動をより力強く感じるようになります。ここで誤解されやすいのが、臨月についての言い伝えです。
「臨月になると胎動が減る」は本当か
「お産が近づくと胎動は減る」とよく言われますが、これは正確ではありません。赤ちゃんが大きくなって子宮の中が手狭になると、ダイナミックに蹴るような動きから、ぐるぐる体をよじるような動きへと動きの「質」が変わることはあります。けれど、健康な赤ちゃんの胎動が、生まれる直前だからといって「ほとんどなくなる」わけではありません。
この言い伝えを信じ込んでいると、「臨月だから減って当たり前」と、本当は受診したほうがよいサインを見過ごしてしまうことがあります。ここが、この記事でいちばん伝えたい注意点です。
横になって静かに意識を向けても、1〜2時間ほど胎動をほとんど感じない。あるいは、いつもと比べて明らかに動きが少ない・弱いと感じる。こうしたときは、食後や夜まで待たず、その時点でかかっている産院に電話し、指示をあおいでください。夜間や休日でも遠慮はいりません。「様子を見よう」と我慢して先延ばしにしないことが、いちばんの目安です。判断に迷うこと自体が、相談してよい理由になります。
宿題にしないカウントのやり方
では、実際にどう向き合えばいいのか。ポイントは、回数や時間を「達成目標」にしないことです。私自身がやるとしたら、次のような肩の力を抜いた形にすると思います。
| 場面 | やること | 考え方 |
|---|---|---|
| 感じ始めのころ | まだ数えなくてよい | 「今日は動いたな」と気づく程度で十分 |
| 妊娠後期・よく動く時間帯 | 赤ちゃんが活発な時間に少し意識を向ける | 何分で10回、と競わない。その子のリズムを知る |
| 数える気になった日 | 横になって、動きに集中する | 数字より「いつもと同じくらいかどうか」を見る |
| いつもと違うと感じた日 | まず産院に連絡 | カウントの結果を待たず、迷ったら相談 |
赤ちゃんは、お腹の中でも眠っています。眠っている間は動きが少なくなるので、「数えたい」と思い立ったタイミングが、たまたま睡眠時間と重なることもあります。数分待つ、少し体を動かす、水分をとる、静かな場所で横になる――こうしてから改めて意識を向けると、動きに気づきやすいとされています。それでも普段と様子が違うと感じるなら、様子見に切り替えず連絡する、という順番が安心です。
大切なのは、毎日決まった時刻にノルマとして計測することではなく、「その子のいつものパターン」をなんとなくつかんでおくこと。基準が自分の中にあれば、「今日は違う」に早く気づけます。
ママレコでできること
「その子のいつも」を頭の中だけで覚えておくのは、意外とあいまいです。昨日はよく動いた気がするけれど、一昨日はどうだったか――記憶は上書きされていきます。
ママレコは、生理や基礎体温、育児の記録を残していくアプリですが、その根っこにある考え方は、この胎動の話とまったく同じです。平均や正解と比べるためではなく、「自分の基準」をつくるために記録する。メモ機能に「今日はよく動いた」「夕方に活発」と一言だけ書き残しておけば、あとから見返したときに、その子のリズムが線になって見えてきます。健診で気になることを聞きたいとき、うろ覚えの感覚ではなく、残した記録を見ながら相談できるのも心強いはずです。
妊娠がわかってからの週数や予定日の数え方は「妊娠週数の数え方|最終月経から計算する理由」に、健診で何を見ているのかは「妊婦健診では何を見ているのか」にまとめています。記録の習慣は、そのまま赤ちゃんが生まれたあとの育児記録・成長記録にもつながっていきます。

ママレコに残す記録や、そこから見える傾向は、あくまで目安であり、医療的な診断ではありません。胎動が気になるとき、いつもと違うと感じたときは、記録やアプリで自己判断せず、かかっている産院に相談してください。
数字より、あなたの「いつもと違う」を信じていい
胎動カウントは、上手にこなせなくても大丈夫です。平均の分数に届かない日があっても、それだけで何かが決まるわけではありません。むしろ、毎日きちんと数えられたかどうかより、「今日はなんだか動きが少ない気がする」というあなたの感覚のほうが、ずっと確かなサインになることがあります。
その違和感を、「気のせいかも」「臨月だから」と自分で打ち消さないでください。迷ったら電話していい。その一歩を、ためらわずに踏み出せますように。
参照
← コラム一覧へ戻る
