夜、布団に入ってから、スマホで「胎動 10カウント 平均」と検索したことはないでしょうか。出てきた記事には「20分くらいが平均」とある。でも今日は、10回動いてくれるまでに40分かかった気がする。数えているうちにこちらが眠くなって、途中で分からなくなった――そんな夜に、かえって不安だけが残る。
胎動カウントは、まじめな人ほど「宿題」にしてしまいます。この記事では、公的なガイドラインをもとに3つを整理します。そもそもカウントは何を測っているのか。平均の数字と自分を比べる意味はあるのか。そして、本当に気をつけるべきサインはどこなのか。

胎動カウントは「合格ライン」を測る検査ではない
先に、いちばん大事なところを書きます。胎動カウントは、点数をつけて合否を判定するための検査ではありません。
産婦人科の診療の指針「産婦人科診療ガイドライン―産科編」(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会)には、胎動の数え方が2つ書かれています。
- 決まった時間のあいだに、感じた回数を記録する方法
- 10回感じるまでに、かかった時間を記録する方法(10回胎動カウント法)
始める時期は、妊娠28週以降とする報告が多いとされています。後者の10カウント法のほうが、妊婦さんの時間の負担は少なめです。
ただし、「何分を超えたら連絡」という点については、専門家のあいだで合意された基準はありません。「10回に2時間以上かかれば異常」としている施設も多い、と書かれているくらいです。
「平均20分」と比べなくていい理由
ガイドラインが紹介している研究では、妊娠末期に10回感じるまでの時間は、平均で約21分でした。ただし、ばらつき(標準偏差)は約18分もあります。
日本の妊婦さんを対象にした研究では、1日でいちばんよく動く時間帯に数えると、平均は約15分でした。そして10人に1人は、35分ほどかかっていました。
つまり「平均は20分なのに、自分は40分かかった」ということは、ふつうに起こります。赤ちゃんには一人ひとり、動きやすい時間帯や動き方のクセがあります。大切なのは、他の妊婦さんの平均と自分を比べることではありません。昨日までの「その子のいつも」と、今日を比べることです。
ガイドラインにも、こんな意見が紹介されています。「何時間以上なら連絡」と決めるより、「胎動が急に弱くなったら連絡」と、本人の感覚を大事にして伝えておくのがよい。
胎動をカウントすることで赤ちゃんを亡くすことが確実に減るのか、まだ結論は出ていません。ただ、ノルウェーでは、胎動について妊婦さんに伝えて、減ったと感じた人をきちんと診るようにしたところ、死産が減ったという報告があります。また、胎動カウントをしても受診や医療の介入は増えず、お母さんの不安はむしろ軽くなったという研究もあります。
胎動はいつから、どう変わっていくのか
赤ちゃん自身は、妊娠の早い時期からお腹の中で動いています。ただ、それを「胎動」としてはっきり感じ取れるようになるのは、もう少し先です。
はじめての妊娠では、20週ごろに初めての胎動を感じる人が多いとされます(産婦人科医の解説による)。ただし個人差がとても大きく、最初は「腸が動いた?」と迷うような、ごく小さな感覚のことが多いのではないでしょうか。
そして、妊娠後期に入ると、多くの人が胎動をより力強く感じるようになります。ここで誤解されやすいのが、臨月についての言い伝えです。
「臨月になると胎動が減る」は本当か
ガイドラインによると、妊娠週数が進むにつれて、10回感じるまでの時間は長くなっていきます。つまり、胎動の回数がゆるやかに減っていくこと自体は、ありえます。赤ちゃんが大きくなり、お腹の中が手狭になると、動き方の感じも変わります。
問題は、ここからです。ガイドラインには、妊娠末期の「異常な」胎動の減少を、「自然な」減少だと思い込んでしまう妊婦さんもいる、と書かれています。
「ゆるやかに変わる」ことと、「急に少なくなる・弱くなる」ことは別物です。「臨月だから減って当たり前」と思い込むと、本当は受診したほうがよいサインを見過ごしてしまうことがあります。ここが、この記事でいちばん伝えたい注意点です。
横になって静かに意識を向けても、胎動をほとんど感じない。あるいは、いつもと比べて急に動きが少ない・弱いと感じる。こうしたときは、様子を見ずに、その時点でかかっている産院に電話して指示をあおいでください。夜間や休日でも遠慮はいりません。お腹の痛み・出血・お腹の張りと一緒に胎動が減ったときは、胎盤がはがれる「常位胎盤早期剝離」のサインのこともあるので、すぐに連絡してください。判断に迷うこと自体が、相談してよい理由になります。
宿題にしないカウントのやり方
では、実際にどう向き合えばいいのか。ポイントは、回数や時間を「達成目標」にしないことです。私自身がやるとしたら、次のような肩の力を抜いた形にすると思います。
| 場面 | やること | 考え方 |
|---|---|---|
| 感じ始めのころ | まだ数えなくてよい | 「今日は動いたな」と気づく程度で十分 |
| 妊娠28週以降・よく動く時間帯 | 赤ちゃんが活発な時間に少し意識を向ける | 何分で10回、と競わない。その子のリズムを知る |
| 数える気になった日 | 横になって、動きに集中する | 数字より「いつもと同じくらいかどうか」を見る |
| いつもと違うと感じた日 | まず産院に連絡 | カウントの結果を待たず、迷ったら相談 |
赤ちゃんは、お腹の中でも眠るものです。眠っている間は動きが少なくなるので、「数えたい」と思い立ったタイミングが、たまたま睡眠時間と重なることもあります。
少し時間をおいて、静かな場所で横になり、改めて意識を向けてみてください。それでも普段と様子が違うと感じるなら、様子見を続けずに連絡する、という順番が安心です。
大切なのは、毎日決まった時刻にノルマとして計測することではなく、「その子のいつものパターン」をなんとなくつかんでおくこと。基準が自分の中にあれば、「今日は違う」に早く気づけます。
ママレコでできること
「その子のいつも」を頭の中だけで覚えておくのは、意外とあいまいです。昨日はよく動いた気がするけれど、一昨日はどうだったか――記憶は上書きされていきます。
ママレコは、生理や基礎体温、育児の記録を残していくアプリですが、その根っこにある考え方は、この胎動の話とまったく同じです。平均や正解と比べるためではなく、「自分の基準」をつくるために記録する。
メモ機能に「今日はよく動いた」「夕方に活発」と一言だけ書き残しておけば、あとから見返したときに、その子のリズムが線になって見えてきます。健診で気になることを聞きたいとき、うろ覚えの感覚ではなく、残した記録を見ながら相談できるのも心強いはずです。
妊娠がわかってからの週数や予定日の数え方は「妊娠週数の数え方|最終月経から計算する理由」に、健診で何を見ているのかは「妊婦健診では何を見ているのか」にまとめています。記録の習慣は、そのまま赤ちゃんが生まれたあとの育児記録・成長記録にもつながっていきます。

ママレコに残す記録や、そこから見える傾向は、あくまで目安であり、医療的な診断ではありません。胎動が気になるとき、いつもと違うと感じたときは、記録やアプリで自己判断せず、かかっている産院に相談してください。
数字より、あなたの「いつもと違う」を信じていい
胎動カウントは、上手にこなせなくても大丈夫です。平均の分数に届かない日があっても、それだけで何かが決まるわけではありません。むしろ、毎日きちんと数えられたかどうかより、「今日はなんだか動きが少ない気がする」というあなたの感覚のほうが、ずっと確かなサインになることがあります。
その違和感を、「気のせいかも」「臨月だから」と自分で打ち消さないでください。迷ったら電話していい。その一歩を、ためらわずに踏み出せますように。
参照
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―産科編2020」CQ007(Minds 掲載PDF)
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―産科編2023」(Mindsガイドラインライブラリ)
- Babyプラス「胎動 赤ちゃんからの「元気だよ」という合図」(監修: 荻田和秀 医師)
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