朝、目が覚めた瞬間に、胃の奥からせり上がってくる感じがある。歯みがきの途中でこみ上げる。冷蔵庫を開けたにおいで、もうだめだと思う。そういう日が続くと、スマホで「つわり ピーク いつ」「つわり いつまで」と検索してしまう。私も同じことをしたと思います。区切りが知りたい。あと何日がまんすればいいのか、その一点だけでも確かめたくて。
けれど検索して出てくるのは、たいてい「平均」の話です。この記事では、その平均が自分に当てはまらなくても落ち込まなくていい理由と、答えのない期間を少しでも楽に過ごすための、記録という道具の使い方を書きます。

「いつまで続くのか」に、確実な答えはない
先に、いちばん知りたいところに答えます。つわりが「いつピークを迎えて、いつ終わるか」は、誰にも断言できません。目安として語られる経過はあります。つわりは妊娠した人の多く(およそ5〜8割とされます)が経験し、多くは妊娠5〜6週ごろに始まって、9〜11週ごろに強くなり、12〜16週ごろまでにやわらいでいくことが多い、と説明されます(日本産科婦人科学会などの解説による)。
ただ、この経過はあくまで「多くの場合」です。始まる時期も、つらさの重さも、いつ楽になるかも、人によって大きく違います。16週を過ぎても続く人もいれば、ほとんど感じない人もいる。だから「平均では9週がピーク」という数字を見て、自分がそこに当てはまらないと、かえって不安になってしまう。平均は、あなたのつわりの予定表ではありません。
ここで書いた時期や割合は、記録や統計にもとづく目安であり、あなたのつわりがそうなると保証するものではありません。気になる症状があるときは、自己判断せず産科などの医療機関にご相談ください。
「ピーク」という言葉が、しんどさを増やしていないか
上位の記事の多くは「つわりのピークは妊娠◯週」と、山のかたちを一本の線で描きます。けれど実際のつわりは、そんなにきれいな山にはなりません。
つわりの原因は、実ははっきりとは解明されていません。妊娠にともなうhCGというホルモンの増え方や、体の変化が関係していると考えられていますが、「これ」と特定された単一の原因があるわけではない、というのが今のところの理解です。原因がひとつに定まっていないものを、「◯週がピーク」と一本の線で語ること自体に、少し無理があるのだと思います。
実際に経験するのは、一本の線ではなく、細かい波です。朝はまったく動けないのに、夕方は少し食べられる。昨日は平気だった料理のにおいが、今日は耐えられない。数日つらい日が続いたあと、ふっと軽い日が来て、また戻る。この不規則さのなかで「今が底なのか、これから底が来るのか」を判断しようとすると、かえって消耗します。平均の山と自分を比べるより、自分の波がどう来ているかを見るほうが、たぶん役に立ちます。
つわりの多くは自然にやわらぎますが、水分もほとんど取れない、食べられず体重が目に見えて減っている(目安として妊娠前から5%ほど)、尿の量が極端に少ない・色が濃い、立ちくらみやふらつきが強い、といったときは「妊娠悪阻(にんしんおそ)」として点滴などの治療が必要なことがあります。がまんを続けず、かかっている産科へ早めに相談してください。判断に迷うときは、自治体の妊娠・出産相談窓口も使えます。
平均と比べるのをやめて、自分の波を知る
やることは、大きく二つに分かれます。ひとつは、しんどさそのものを少しでも軽くする工夫。もうひとつは、自分の波を知って、対処と受診の判断に使うことです。
まず、その日をしのぐ工夫から。よく言われるのは、空腹になるとつらくなりやすいので、一度にたくさんではなく、少量をこまめに口に入れること。冷たいものやさっぱりしたものが楽な人が多いこと。においがつらいなら、温かい料理より冷ましたものを選ぶこと。ただ、これも「万人に効く正解」ではありません。試して、自分に合うものだけ残していく、という向き合い方になります。
| つらい場面 | 試せること |
|---|---|
| 起きぬけの吐き気 | 枕元にクラッカーや小さなおにぎりを置き、起き上がる前に少し口に入れる |
| 空腹でこみ上げる | 食事を小分けにして、間隔を空けすぎない。飲みものはこまめに少しずつ |
| においがだめ | 温かい料理を冷ましてから食べる。換気する。においの強い場所を避ける |
| 何も食べられない日 | 食べられるものだけでいい割り切りを。まず水分を優先する |
| つらさが続く | 何を食べられて何がだめだったか、時間帯とあわせて短く記録しておく |
この表の最後の一行が、もうひとつのやること、「自分の波を知る」につながります。つらい日ほど記憶はあいまいになります。あとから振り返って「先週はどうだったか」を思い出そうとしても、うまく出てきません。だから、そのとき短くメモを残しておく。朝がきつい日が続いているのか、特定のにおいが引き金になっているのか。それが見えるだけで、明日の身構え方が変わりますし、受診したときに医師へ伝える材料にもなります。
妊娠週数そのものが今どのあたりなのかは、妊娠週数の数え方を目安にしてください。健診で何を見て、次に何を決めるのかは妊婦健診では何を見ているかにまとめました。
記録が、しんどさの「見取り図」になる
答えのない期間をやり過ごすのに、記録が役に立つのは、この波を自分の外に出しておけるからです。ここでママレコの話を少しだけ。
ママレコには、日付や記録にひもづかないメモ機能と、妊娠週数のカウントダウンがあります。しんどいさなかに長い日記は書けません。だから「今日は朝だけきつかった」「ごはんのにおいがだめ」と、ひとことだけ残す。それが数日分たまると、自分でも気づいていなかったパターンが、うっすら見えてきます。朝に偏っているのか、特定の食べもので必ず来るのか。波の見取り図があると、次にそれが来たとき「またこれか」と身構えられて、少しだけ怖くなくなります。
同じ記録は、支える側にも渡せます。つわりのしんどさは外から見えません。だから、本人が見せてもいいと思ったときにメモを見てもらえば、「今日は朝がきつい日だな」と、いちいち説明しなくても察してもらいやすくなる。支える側の関わり方はつわりを支える側の具体行動に書いたので、パートナーと一緒に読んでもらえたらと思います。

ママレコで妊娠中の記録やメモが、自動でパートナーに見えるわけではありません。共有できるのは生まれてからの育児記録と成長記録で、生理・基礎体温・妊娠の記録や、メモ、アイコン付きのプライベート予定は共有されません。妊娠期のメモは「本人が見せたいときに見せる」使い方になります。育児記録の共有そのものは無料です。
山の頂上は、あとになってわかる
つわりのつらいところは、渦中では「今が底なのか」がわからないことです。ピークは、たいてい過ぎてから「あれが山だったんだな」とわかる。だから今、平均のグラフと自分を見比べて、進みが遅いと落ち込む必要はないのだと思います。
区切りは、数字が決めてくれるものではありません。それでも、自分の波を書き留めておけば、しんどさの正体が少しだけ輪郭を持ちます。答えのない期間を、無理に前向きに乗り越えようとしなくていい。今日食べられたものと、今日だめだったにおいを、ひとつ書き留めておく。それくらいの一歩で、十分だと思います。
参照
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