診察室を出て会計を待っているあいだに、ふと気づく。「次っていつだっけ」「さっき聞こうと思ってたこと、また言えなかった」。妊婦健診は数分で終わることも多くて、質問を一つ二つ抱えたまま帰ってしまう——そんな経験は、めずらしくないのではないでしょうか。
毎回、体重を量って、血圧を測って、おしっこを出して、お腹を見てもらう。一見すると同じことの繰り返しに感じますが、実は時期によって「何を見ているか」は少しずつ変わっています。この記事では、健診の回数と費用のしくみ、そして毎回の限られた時間を無駄にしないための準備を整理します。

妊婦健診は妊娠全体で約14回が目安
厚生労働省は「標準的な妊婦健診の例」として、次のペースでの受診をすすめています。1回目が妊娠8週ごろなら、出産までに合計14回くらいになります。
| 時期 | 受診の間隔 | 回数の目安 |
|---|---|---|
| 妊娠初期〜23週 | 4週間に1回 | 1〜4回目 |
| 24〜35週 | 2週間に1回 | 5〜10回目 |
| 36週〜出産まで | 1週間に1回 | 11〜14回目 |
お腹が大きくなり、出産が近づくほど、間隔は短くなるわけです。「後半になって急に増えた」と感じるのは自然なことで、体とお産の変化が速くなる時期だから、と考えるとしっくりくるのではないかと思います。
妊婦健診の費用と、公費の補助
妊婦健診の費用は、市区町村が補助しています。妊娠がわかって役所に「妊娠届」を出すと、母子手帳といっしょに受診券(補助券)をもらえます。
こども家庭庁の調査(2025年4月時点)では、全国すべての市区町村が14回以上の健診を補助しています。妊婦1人あたりの補助額は、全国平均で113,647円でした。
ただし、補助の金額や券の形は自治体によって違います。追加の検査などで、自己負担が出ることもあります。「全部タダ」と思い込まず、もらった券に何回分・いくら分が含まれるかを最初に確認しておくと安心です。
住んでいる市区町村以外で受診しても、すべての市区町村に補助のしくみがあります(こども家庭庁の同じ調査)。ただし、受診した病院と契約していない場合は、いったん自分で払い、あとから申請して払い戻してもらう「償還払い」になることが多いです。領収書は捨てずにとっておき、手続きは住んでいる市区町村に確認してください。
妊婦健診では何を検査する?
毎回の健診では、3つのことをします(厚生労働省)。
- 健康状態の確認: 妊娠週数に合わせた問診や診察
- 基本の検査: 子宮底長、腹囲、血圧、むくみ、尿検査(糖・たんぱく)、体重(1回目は身長も)
- 保健指導: 食事や生活のアドバイス、不安や悩みの相談
一見すると、毎回同じことの繰り返しに感じるかもしれません。でも、これに加えて、時期ごとに必要に応じた検査が入ります。厚生労働省の例では、次のとおりです。
| 時期 | 必要に応じて行う検査の例 |
|---|---|
| 妊娠初期〜23週 | 血液検査(血液型、貧血、血糖、B型・C型肝炎、HIV、梅毒、風しんの抗体など)、子宮頸がん検診、超音波検査 |
| 24〜35週 | 血液検査(貧血、血糖)、B群溶血性レンサ球菌(GBS)、超音波検査 |
| 36週〜出産まで | 血液検査(貧血)、超音波検査 |
ほかに、HTLV-1抗体の検査と性器クラミジアの検査を、妊娠30週までに1回行う例になっています。実際の内容は、医療機関の方針や、あなたと赤ちゃんの状態によって変わります。
毎回はかる体重や血圧は、健診の日だけの「点」の記録です。家でも記録しておくと、その間を「線」でつなげられます。医師に変化を伝えるときの材料にもなります。
性器出血がある、強いお腹の痛みや張りが続く、破水したように感じる、胎動がいつもよりはっきり減った。こうしたときは、次の健診を待たずに、かかりつけの産科に電話で相談してください。健診を受けないまま陣痛が来ると、病院はそれまでの経過が分かりません。お母さんと赤ちゃんにとって、とても危険なお産になります(厚生労働省)。判断に迷うこと自体が相談してよい理由です。ここに書いた目安は一般的なもので、あなたの状態に合うかどうかは診察でしか分かりません。
限られた診察時間を、聞きそびれで終わらせない
健診そのものは短くても、準備しておけることはいくつかあります。特別なことではなく、忘れないための下ごしらえです。
| タイミング | やっておくこと |
|---|---|
| 次回の予約が決まったら | 健診日をすぐに書きとめる(当日の持ち物・受診票も一緒に) |
| 健診までの数日 | 気になったこと・不調を、思いついたタイミングでメモに残す |
| 前日〜当日 | メモを見返して、聞きたいことを2〜3個にしぼる |
聞きたいことは、多すぎると結局どれも聞けません。「今いちばん不安なこと」から順に3つほどに整理しておくと、短い診察でも要点を伝えやすくなります。体重や体調の記録があれば、それを見せながら「この日から張りが増えた気がする」と具体的に話せます。私自身も、口頭だけだとうまく言えないことが多いので、事前に書いておくやり方に頼ると思います。
妊娠の数え方や体重の目安そのものが気になる方は、妊娠週数の数え方や妊娠中の体重増加の目安もあわせて読んでみてください。健診で説明されたことの背景が分かると、質問もしぼりやすくなります。
ママレコでできること
「聞きそびれ」は、記憶に頼るから起きます。頭のなかだけで抱えていると、診察室に入った瞬間に飛んでしまう。だから、思いついた場所でその都度、外に出してしまうのが確かです。
ママレコには、日付や記録に紐づかない独立したメモがあります。iPhoneのリマインダーのようなチェックリスト形式で、「次の健診で聞くこと」を思いついたそばから書き足しておけます。当日はそのリストを開くだけ。聞けたものからチェックを付けていけば、言い忘れが減ります。
健診日はカレンダーに予定として入れておけば、間隔が変わっても次がいつかを見失いません。妊娠中は、ホーム画面にいまの週数が出ます。出産予定日から「今が何週か」を自動で計算してくれます。体重は妊娠週を横軸にしたグラフに記録でき、健診のときに経過を見せる材料になります。

ママレコが表示する妊娠週数・予測・グラフは、記録にもとづく目安であり、医療的な診断ではありません。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関にご相談ください。
おわりに
妊婦健診は、赤ちゃんとあなたの経過を定期的に確認していく場です。回数や費用のしくみを知っておくと見通しが立ちますし、聞きたいことを一つメモに残しておくだけで、次の診察は少しだけあなたのものになります。次に「聞きそびれた」と思ったら、その場でメモに一行、書きとめておいてください。
参照
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